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【2024/11/24 23:02 】 |
独創と模倣の区別がつくか
突然だが、わたしは次のような経験をしたことがある。
中学生のあるとき、自分が思いついた化け物の絵をたくさん描き、友達に見せたことがある。
わたしは、それを全くの独創だと思っていたが、それを見た友達は「ずいぶんドラクエに出てくるモンスターの影響を受けているな」と冷やかした。
確かに、その絵を描いた時期、「ドラゴンクエストモンスターズ」をやっていたのだが、彼にそう言われるまで全く影響を受けていたとは気がつかなかった。それどころか、それは、色々小難しい本を読んでイメージしたもので、そんな低俗なゲームの影響ではないと言い張り、喧嘩になった。わたしは決して、心の中でも、対外的にも、ドラクエの影響と言うことを認めなかった。
さて、友達とわたしと、どちらの主張が正しかったのだろうか。常識的に考えて、わたしのことを一番よく知っているのはわたし自身であるから、わたしの主張が正しいように感じる。だが、一方で、わたしが無意識のうちに自分自身に嘘をついている可能性もある……。
いま、このことに関して、次のような思考実験をしてみたので、ここにメモをする。

昔々、土器を大量に作る文化が、ある島にあった。その人たちは、すべすべの模様がない土器を作っていた。ある時、その島に別の文化を持つ人々がやってきて、先住者と混在してすむようになった。彼らも土器を作るが、口縁部より少し下に、凸帯文を施す習慣を持っていることで、先住者とは区別された。
だが、新顔と同居する先住者の中の一人が、凸帯文を施した折衷式の土器を作り出した。そこに、文明国から来た文化人類学者が、こう質問した。
「なぜ君は、突然凸帯を施文するようになったのかね? 新顔たちの真似だろう」
だが、なぜかその先住者は次のように主張するのだ。
「いいや、これは僕のオリジナルの発想さ。確かに彼らの凸帯文とよく似ているが、これは村の近くに生えている竹の節をデザインしたものさ。最近、竹が増えているから、その強さにあやかってね」
文化人類学者は、どう反応すればいいのだろうか。彼が嘘をついていると判断するのか? だが、嘘をついているという明らかな証拠はない。どんなに、凸帯文土器に類似していても、制作者の主張する意図は、あくまで「竹をデザインした」ものなのだ。
ここに、伝播主義と進化主義の対立をかいま見ることが出来る。
おそらく、わたしが文化人類学者であるならば、新顔たちの土器の模様が「伝播した」と考えるだろう。「彼は、「竹」だ、と主張しているが、実際本人自身あまり自覚していないようだが、新顔たちの土器の影響を受けたのは間違いあるまい。何しろ毎日、凸帯文土器を見ているのだから」……それが普通の考えだろう。

だが、これには反証もある。
わたしが高校生の時、なぜか男性生殖器を連想させるケースに入ったグミが販売されていた。ふつう、いくら連想させるからと言って、制作者が男性生殖器をモデルにケースを作ったとは考えまい。たとえ、デザインした人間が男性で、放尿するときいつも男性生殖器を見ているとしても、だ。しかし、ある種の精神分析家ならば、「いや、このデザイナーは、無意識のうちに男性生殖器を模倣しているのだ。放尿するとき、風呂にはいるとき、つまり毎日それを見ているのだから、影響を与えない方が不可解だろう」
その精神分析家の考えは、少し変わっているが、筋が通っていないわけではないだろう。通俗的な精神分析の文脈では「性」こそが、人間の行動の最終審級だという話だし……。

つまり、何が、それのデザイン・文様に影響を与えたかなどは、如何様にも解釈できる、と言うことだ。そして、その解釈は人それぞれあって良いのだ……。それが、現在のわたしの結論だが、正しいだろうか。
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【2011/12/21 22:41 】 | 思索メモ | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
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